2011年12月31日土曜日

武蔵野の自然~くぬぎ林増刊号~にみる30年の記録

  

  武蔵野野鳥の会創立30周年を記念して、同会機関誌『くぬぎ林』の増刊号が出されました。武蔵野野鳥の会は、故・山口正信氏を中心に1981(昭和56)年に設立された団体で、埼玉県新座市の古刹・平林寺などをベースに、探鳥会や調査などを活発に行っていて、現会長は荒尾精二氏。季刊の機関誌は通巻122号を数えています。

  そんな会の歴史の一区切りとして出されたのが『武蔵野の自然~くぬぎ林増刊号』で、目次は、Ⅰ 武蔵野の野鳥 Ⅱ 平林寺境内林 Ⅲ 武蔵野の原風景の3部構成となっています。中味はそれぞれ読み応えのある内容で、いずれも目を通す価値がありますが、とくに「春日町2丁目のミニサンクチュアリー」は、山口氏のご逝去後、ご自宅の練馬区春日町という、典型的な武蔵野の住宅地での30年間の記録がまとめられたもので、個人宅の庭での鳥の変遷という、他の文献では得難い貴重な資料となっています。
  
  また、「平林寺におけるカラスの就塒状況」は29ページにおよぶまとまったもので、東京都に隣接する典型的な『緑島』(りょくとう;造語)である平林寺をねぐらとするカラス(ハシブト・ハシボソ混在)の、飛来数の変遷とその解析がよみもので、「とうきょうのカラス問題」に一石を投じる内容となっています。   
  さらに、日ごろ気になっていることに対して、具体例となるグラフも見つけました。「金山調節池周辺の鳥」の中に掲載されている、1996年からの年間観察種類数の推移のグラフは、初年度57種から、最近年の2010年には72種と、種類数が増えてことを示しています。コメントでも、その傾向は日ごろ感じていた印象と一致すると記されています。最近、とくに21世紀に入ってから、各地で“鳥影が薄い”という声をよく耳にしますが、実際はどうなのか、各地の同様の調査記録をまとめるきっかけとなりそうです。

  A4判・204ページ・非売品。日本野鳥の会東京に寄贈されていますので、事務所で読むことができます。

2011年12月26日月曜日

ワシタカ類の増加はなぜ?・葛西臨海公園探鳥会に参加して

  

 12月25日(日)、日本野鳥の会東京の葛西臨海公園探鳥会に参加しました。寒波到来の情報に参加者一同厚着。しかし、風はほとんどなく、冬晴れの青空のもと、気持ちいい探鳥日和でした。その上、若き男女の姿が目立つという明るい状況に担当者も張り切ったためか、鳥果(ちょうか)も62種と上々。

  ところで、その中で気になることが2つ。ひとつはスズガモの将来。東京湾は日本有数の越冬地で、葛西沖はその生息地のひとつですが、今年は数がやや少ないのが気にかかります。そのことについては別の機会に触れるとして、もう一つはこの探鳥会で記録されたワシタカ類が8種類16羽ということ。 ミサゴ1羽、トビ5羽、オオタカ3羽、ハイタカ1羽、ノスリ3羽、チュウヒ1羽、 ハヤブサ1羽、チョウゲンボウ1羽。しかもこの地では年々種類・個体数が増える傾向があり、また同じことが千葉県市川市の行徳鳥獣保護区(新浜)などでも見られていることです。
  「猛禽類は食物連鎖の最高位に位置し、この鳥が常時生息することは自然が豊かな証」とか。しかし、生態学の教科書どおりとは思えない状況を目の当たりにすると、これをどう考えればいいのか。悩ましい事態です。

  午後3時、 探鳥会の終わりごろには、若いオオタカがオオバンを襲い、水中に沈めて息の根を止めという狩りが見られ、さらに、その獲物をノスリが横取りして、それをいじましくすぐわきで見続けるオオタカの姿〔写真・左が横取りされた若いオオタカ〕を観察中に、その背後に、オオタカの成鳥が飛来し枝に止まり、順光のもとその美しい白い姿を望遠鏡でじっくり鑑賞という、過去を知っているベテランバーダーには夢のような状況でした。

いまから35年ほど前の1月に実施された東京湾一斉カウントでの葛西の記録を見ると、1976年はチョウゲンボウ1羽、1978年はゼロ、1979年もチョウゲンボウ1羽のみ。ちなみに、前記79年の千葉県富津~神奈川県大黒埠頭までの東京湾一帯で記録されたワシタカ類は5種で、トビ150羽、ノスリ1羽、チュウヒ18羽、ハヤブサ1羽、チョウゲンボウ30羽という状況です。
  いまオオタカに加えてハイタカも街なかに増えているという情報があり、注目しているところです。現在の東京の状況でのワシタカ類の増加は、単純に喜べることなのか、はたまた心配すべきことなのか。(川内 博)

2011年12月14日水曜日

東京都内でのカラスのクルミ割り行動

  

10月に青梅市内の多摩川に行ったとき、今夏の台風でできた広い礫河原で、ハシボソガラスがオニグルミの実をくわえて20~30m飛び上がってはクルミを落とすという行動をしていました。何回も落とすうちにクルミは割れ、中身を嘴でほじくって食べる様子も観察しました。食べ終わるとすぐに新しいクルミをくわえて現れ、同じ行動を繰り返していました。こういったクルミ落としの行動は全国で観察されており、海岸沿いでは堅い殻を持つ貝類を食べるときにも行われるそうです。〔写真・渡部良樹氏提供〕
 このような行動が都内ではどれくらい観察されているのかと思って情報を募ったところ、多摩川下流や八王子市、青梅市、羽村市、福生市、小金井市、日野市、羽村市など都内各地で観察されていることが分かりました。古いものでは1994年(多摩川下流)、1995年(八王子市)という記録もあり、以前からこのような“文化”を持ったカラスがいたことがわかりました。また、これら以外にも八王子市や福生市では、道路にクルミを置いて自動車に轢かせて割っていると考えられる行動も観察されているそうです。
 都内でクルミを落として割る、車に轢かせて割るといった観察をされたことのある方は情報をお寄せください。また、これ以外にもカラスの面白い行動があれば是非お知らせください。観察事例をまとめて報告する予定です。                                       (御手洗望)
【情報送り先】 windswift★hotmail.co.jp (★を@に変えてお送り下さい)