2011年3月27日日曜日

興味深かった「サシバ・シンポジウム」

           

 3月5日(土)の午後、東京・池袋の立教大学で開かれた、第14回 日本オオタカネットワークシンポジウム「サシバの繁殖期の生態と生息状況」は、興味深い内容の発表が続きました。基調講演は東淳樹・岩手大学講師による「サシバの繁殖期の生態」。おもしろかったのはそれに続いての「各地におけるサシバの生息状況の報告」。とくに石川県や長野県など、山の多い地域での観察報告は瞠目の内容でした。
 サシバといえば「谷戸を代表するタカ」といったイメージで、里山のシンボル的な野鳥と思いこんでいました。ところが、北陸鳥類調査研究所の今森達也氏の発表「北陸地方の山地における水田に依存しないサシバの生息事情」によると、山の中にもふつうに生息し、里とは違う生態で快活に暮らしているとのこと。具体的には、北陸地方では、山の中ではサシバ・クマタカ・イヌワシが御三家ともいえる状態で生息し、サシバは水田などがない、深い谷の底部にふつうに暮らしているとのこと。その生態についてはまだ不明なことも多く、解明されていない部分もあるようですが、サシバには古くから、「里の鷹」と「山の鷹」という区別があり、「サシバ=里山・谷津田」というのはステレオタイプだということを知りました。〔写真提供:土橋信夫氏〕
 おりしも『野鳥』の4月号はサシバ特集で「滅びゆく里山の猛禽」という定冠詞がついていますが、今回のシンポジウムに参加した人は、それがやや一方的な見方であることを知ってしまいました。もちろん里地里山の保全のために、サシバを象徴的な鳥として取り上げることは問題ないのですが、その保護研究は一段高いレベルが要求されるようになったようです。(川内 博)

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