2009年9月30日水曜日

繁殖記録・5 東京下町でのセイタカシギの繁殖近況

  

 かつては東京港・江東区地先の中央防波堤埋立地でコロニーを形成していたセイタカシギが、最近、東京・千葉・埼玉などの各地で繁殖が記録されています。今回、東京の下町地域である、旧中川・荒川河川敷・葛西臨海公園での2003~2009年の繁殖状況が報告されました。そのダイジェストをご紹介します。
 この地で観察を続けているのは、越冬鳥調査にも参加されている岩崎正義さん。岩崎さんのレポートによると、旧中川ではその7年間で36羽のヒナが誕生し、19羽が巣立ったとのこと〔写真〕。最盛期の2005年には7組が営巣し、14羽のヒナが誕生し、7羽が巣立ったとのこと。全体の巣立ち成功率も5割を超えていますが、岩崎さんの観察によると、ヘビ・ネコ・カラス・豪雨などに加え、営巣地での人為的な問題から、ヒナの誕生までに困難なことが多数あったとのこと。しかし、矢板にさえぎられて岸に上がれないヒナを近所の人が網ですくって助けたとか、関係する自治体の工事関係部署が繁殖期に工事を止めてくれたことなども記させていて、地元の人たちがみんなで見守ったことが読み取れます。
 岩崎さんによると、7年間連続して繁殖していた旧中川も、今年で営巣は終わりではないかとのこと。なぜか? 詳しい内容は『ユリカモメ』12月号・研究部レポートに掲載される予定ですので、ぜひお読みください。(川内博)

2009年9月21日月曜日

繁殖記録・4 八王子でイソヒヨドリの繁殖確認

  

イソヒヨドリは、日本では磯や港など海岸周辺が主要な生息地域であるが、近年では都市部にも生息するようになったといわれている。八王子・日野カワセミ会の活動フィールドである八王子市、日野市内でも今までイソヒヨドリが何回も目撃されていた。カワセミ会の1983年~2009年6月までの鳥信に47件記録されている。しかし、確実な繁殖記録は2007年まではなかった。
2008年4月にカワセミ会会員A氏が、友人から八王子市内で雌雄を確認という、繁殖の可能性を示唆する情報を得た。2009年5月に再びA氏から、「友人からの情報ですが、八王子市内付近でイソヒヨドリが繁殖し、雛が巣立ったそうです。巣立ちビナを2羽まで確認したが、雌が餌を運び込むので巣内には雛がまだいるようだと話していました。」という情報が寄せられた。
 そこで、粕谷は5月29日に確認に行った。雄親1羽、雌親1羽、巣立ち雛1羽が屋根などにいた。雌親が近くの桜の木から赤くなった実をとって、約30m離れた建物の屋根の軒下で待つ嘴の黄色い巣立ち雛に与えた。桜の実を銜えた雌親の証拠写真は撮れた〔写真〕が、雛にその実を渡すところの写真は撮れなかった。
 6月6日に粕谷は再度観察した。雄親1羽、雌親1羽、巣立ち雛2羽を確認。雌親1羽+巣立ち雛2羽は屋根上の広告板やアンテナに一緒にいて、1羽の雛は雌親に餌をねだる姿勢を示した。雌親は桜の実をとる行動はなく、屋根から少し飛び上がりフライキャッチのような行動を数回繰り返していた。空中の虫を捕っていたのかもしれない。雌親は時々綺麗な声で鳴いていた。一方、雄親は単独行動で別の建物の屋根にいるのが観察された。
 粕谷は6月13日以降、7月までの間、2番子の繁殖を期待して、何回が観察したがこの場所ではイソヒヨドリは確認できなかった。(粕谷和夫

2009年9月18日金曜日

足環付きイカルの身元判明:長野県茅野市→練馬区

  

昨冬は、都内各地でイカルとシメの大群がみられましたが、練馬区の都立光が丘公園で3月19日撮影中に、足環のついたイカルを撮影しました〔写真〕。その写真が山階鳥類研究所に送られ、このたび次のような返事をいただきました。
◎右足/赤、左足/上-赤・下-環境省金属リング、性別:不明、年齢:成鳥、放鳥日:2008年1月14日、放鳥場所:長野県茅野市

この結果、私が第一回収者として登録されるそうです。なお、放鳥者の方がたいへん喜ばれているとのことと、データの整理が終了次第、回収記録の写しと記念シールが送られてくると記されていました。
ハクチョウやガンなど大型種での目視や写真での標識確認はよく聞きますが、小鳥類でもしっかり撮っておけば役に立つことがわかりました。それにしても長野から東京へようこそ。(土橋信夫)

2009年9月2日水曜日

『緊急集会・三番瀬が危ない!』のご案内

  

 東京湾最奥部の千葉県の谷津干潟三番瀬〔写真〕は、日本有数のシギ・チドリの生息地として知られています。最近の谷津干潟には食べ物(ゴカイなど)が少ないらしく、シギ・チドリ類の飛来数が最低レベルとのこと。内陸部化した環境の保全はなかなか難しいことですので、将来が心配です。それだけに三番瀬の現状維持は重要です。しかし、この場所には常に開発の動きつきまとっています。そこで、『緊急集会・三番瀬が危ない!』9月12日(土)午後1時30分~5時の予定で、市川市文化会館3階・第5会議室で開かれるという知らせがありましたのでご案内します。
 チラシの文には、『森田知事の誕生以来、三番瀬の猫実川河口域を人工海浜にする動きが強まっています。県は、6月県議会において、ラムサール条約登録の手続きが進まない理由として、「登録されると、埋め立てや建築等の建設をする場合に環境大臣の許可が必要になる」と答弁しました。また、三番瀬に第二湾岸道路を通すことも表明しました。一方、市川市は、後背地の再開発と一体で、猫実川河口域を人工ビーチにするため、さまざまなことをもくろんでいます。』とあります。
 東京湾岸の水鳥に詳しい、日本野鳥の会東京支部幹事の田久保晴孝さんによると、三番瀬の現状は決して良くなく、ミヤコドリなどを撮ろうとカメラマンが干潟の奥まで追いまわしたり、満潮時に水鳥などが休息している堤防や人工島に、釣り人が立ち入ったりと、頭の痛いことが続いていることです。
 日本野鳥の会東京支部では、これらの干潟とともに、江戸川区葛西の葛西臨海・海浜公園の鳥類園、人工なぎさを対象とした探鳥会を毎月実施しています。また、東京都RDB改訂関係で、東西の人工なぎさの調査が実施されています。“調査は行われたが、鳥はいなくなった”というのでは、研究の意義がありません。ぜひ多くの方が出席して、どこがポイントなのかを把握し、今後の活動に生かしていただければと思います。
 会場の市川市文化会館は、JR総武線・都営地下鉄新宿線「本八幡駅」より南へ徒歩10分、京成線「京成八幡駅」より徒歩15分。試料代500円。三番瀬を守るか連絡会主催、日本湿地ネットワーク(JAWAN)後援。集会問い合わせ先:牛野くみ子・電話 047-453-4987