2009年5月31日日曜日

“移住したくなった”八丈島・繁殖期の伊豆諸島その2

  

 5月26日(火)早朝5時、三宅島・錆ヶ浜港を出て約4時間。東海汽船のさるびあ丸は八丈島・底土港に無事着岸。当日は快晴。宿に荷をおろして、伊豆諸島の最高峰・八丈富士(西山)へふもとから徒歩で。鳥影は少なく、昼過ぎに山頂(854.3m)。派手に出迎えてくれたのは30羽ばかりのハシブトガラスの群れ。中腹に広がる牧場をねじろにしている模様。しかし空にはアマツバメが飛び交い、火口の緑のなかからはイイジマムシクイのさえずりが聞こえ、気分は爽快。その火口へ下りると路は分かれていて、まず浅間神社へ。路の最後には断崖絶壁に囲まれた火口(小穴)があって、いつか見たガラパゴス・サンタクルス島の光景を思い出しました。もう一方の中央火口丘への路は、これもまたガラパゴスの樹海を思わせる着床植物が生い茂る密林。途中からは踏み跡があやしくなりUターン。同じ大陸から離れた火山島なので、伊豆諸島とガラパゴス諸島は似ているのでしょう。
 翌日は、東山の三原山・唐滝川コースへ。バスを降りてから始めたセンサスは、10時過ぎにも関わらず、ウグイス、ホトトギス、モズ、キジバト、アカコッコと次々と現れ、標高300mくらいからはコマドリ、イイジマムシクイ、ミソサザイの共演。美声が谷間いっぱいに響き渡る状態でした。イイジマムシクイをメボソムシクイに置き換えたら、東京都最高峰の雲取山頂付近と同じ。途中硫黄沼を見て、昼前には唐滝へ。その間、鳥の声が絶えず、早朝ならば、三宅島・大路池畔なみの大コーラスが聞けるのではないかと思いました。その足で三原山の山頂へと急ぎましたが、雲行があやしく断念。
 3日目の28日(木)は朝から大雨と強風。今回の第一の目的の八丈島での協力者・岩崎由美さんとの出会いは、そんな中の八丈ビジターセンター。初めてお会いしたにも拘らず、話は鳥だけでなくゴミ問題まで。八丈島の自然に惚れ込んだ岩崎さんにとって、頭の痛いところとのこと。その夜の宿は岩崎さんご推奨のロッジ。気持のいいベット、そしてディナーは味・量とも大満足。食後はオーナーに勧められたマンガ“流されて八丈島”に抱腹絶倒。作者は“たかまつやよい”さん。2年前に一人で移り住んだ女性漫画家で、島の生活ぶりがありのままに描かれているとのこと。読後は私も島へ移住したくなりました。
 29日(金)の朝は薄日がさす中をホタル水路~植物園を回り、アカコッコのさえずる姿を写真におさめ、前日は欠航した東京への船が出るのを幸いに、約11時間の長旅で夜8時過ぎに竹芝へ。悪天候の続く中、何とか目的達成し、繁殖期の伊豆諸島の旅・前半部が終わりました。(川内博)

2009年5月30日土曜日

“イイジマムシクイのさえずりシャワー”三宅島大路池・繁殖期の伊豆諸島その1

  

 いったい何羽いるのだろう?頭上に覆いかぶさった黒い緑の中から、イイジマムシクイのさえずりが降ってくる。個体確認不能。5月24日(日)の早朝6時、三宅島大路池の周りを歩きながら、簡単なセンサスを試みようとしましたが、シャワーのような状態で数がかぞえられない事態でした。2番目に多いのはメジロ、ヒヨドリ、ウグイス、ミソサザイ、コマドリ、アカコッコ、ヤマガラ、シジュウカラ、頻繁にカラスバト、ホトトギス、コジュケイ、コゲラ、ハシブトガラスの声がまじって、湖畔一体大合唱。こんなにすさまじいコーラスを聞いたのは何十年ぶりといった印象でした。
 東京都産鳥類目録作成も第2段階に入り、島嶼部の協力者との顔合わせを始めました。第1弾が三宅島・御蔵島・八丈島ということで、前夜10時20分、東京・竹芝発のさるびあ丸(5000t)で、三宅島に降り立ちました。三宅島の協力者は、長年アカコッコ館に勤めていた日本野鳥の会の山本裕さんですが、ここで会ったのは、現在同館のチーフレンジャー・篠木秀紀さん。2001年以降の鳥類目録を視野に話が弾みました。とくに大路池畔のイイジマムシクイの密度は半端でないこと、そして、イイジマムシクイについてきちんと研究がなされていないことなど、三宅島の鳥の調査・研究での問題点が数多く出てきました。さらに、2000年の噴火以後、現在もガスマスクの携帯が義務付けられている状態での島外からの探鳥会のあり方、島の今後などまで話は発展しました。
“イイジマムシクイのさえずりシャワー”というフレーズは、館前の掲示ポスターに書かれていたもので、まさに的を射た表現だと思います。翌日午後にアカコッコ館横の薄暗い水場で観察をしていると、メジロ・ヤマガラ・カワラヒワ・・・などにまじってイイジマムシクイも何度も水浴びに訪れてきました。この鳥は生息地が世界で伊豆諸島とトカラ列島だけの天然記念物。
 26日(火)早朝5時、錆ヶ浜港に着いたさるびあ丸からは、最新のモスグリーンの大型双眼鏡を首からかけた10人ほどの白人バードウォッチャーが意気揚々と降り立ってきました。世界をまたにかけた一団かと見受けましたが、日本が誇れる探鳥地へようこそという気持ちと、研究が進んでいない残念さが交差する複雑な思いでした。御蔵島へは宿が取れないため断念し、ほとんど人が乗っていない船で、八丈島へと歩を進めました。(川内博)

2009年5月20日水曜日

東京・千代田区のヒメアマツバメ健在・他の場所は?

  

 東京都心にヒメアマツバメのコロニーがあることを知っていますか。漢字で「姫雨燕」と書くこの鳥は、燕といっても、身近にいるツバメとは違うグループで、ツバメがスズメ目の小鳥であるのに対し、アマツバメ目。おなじ仲間には、中国料理で珍重されている『つばめの巣』で知られるショクヨウアナツバメ、また、日本には夏鳥として山地の岩壁に渡来するアマツバメ、ハリオアマツバメなどがいます。
 この鳥は以前は日本産鳥類ではありませんでしたが、1967年に静岡市で繁殖が確認された新参鳥。その後、西日本の太平洋側の各地で生息が見つかり、東京での初確認は1970年三宅島、本土部では72年渋谷のこと。繁殖は76年6月。調布市多摩川原橋のイワツバメのコロニーに中に成鳥で見つかったのがはじめて。その後多摩川流域を中心に、大田区~八王子市まで分布を広げていき、97年からは荒川沿いでも見つかっています。
 そんなヒメアマツバメの最新状況のひとつが、千代田区神田駿河台にそびえる24階建ての『三井住友海上ビル』の最上階外壁にある“穴”でのコロニー。地上からは100メートルの高さ。天然の岩壁のすきまから人工のコンクリート壁の空間に乗り換えての都市鳥化といえます。この話は、『ユリカモメ』№605(2006年3月号)に詳しく載っていますが、その後のフォローをと思っているうちに3年がたってしまいました。
 5月18日早朝、付近を探索する機会があったので観察したところ、30羽以上が乱舞し、“穴”への出入り、そして巣が見え、健在であることを確認しました。
 ヨーロッパの街などでは、教会の尖塔周辺を、ビーンビーンと大きな声で鳴きながら飛びまわるヨーロッパアマツバメの群れが印象的ですが、東京でもそんな光景が見られるようになるかもしれません。
 ところで、都心部での生息は今のところ、ここ1か所しかわかっていません。他の場所での状況をご存じの方はお知らせください。(川内博)

2009年5月11日月曜日

夜の鳥?明らかにされつつあるミゾゴイの生態

  

 ここのところ東京都内で、ミゾゴイ観察の話題が重なっています。世田谷区の蘆花恒春園では、4月10日~4月23日までの10日間滞在しました。園内では日中行動し、背丈の低いササ藪の中を歩きまわり、落ち葉留めのような場所で、ミミズなどを採餌していたとのことです。驚くと木に飛びあがり、動かずじっとしているという行動が見られたようです。止まる木の高さは2.5~3メートル程度で、周辺に高木がある環境ですが、高い木には止まらなかったとのことです。また、新聞報道によると武蔵野・三鷹市の井の頭公園でも4月27・28日に観察されています。そのほか、23区内でも観察記録があるとか。東京都内では、一昨年にも4月に足立区舎人公園に現われて話題になりました。
 ミゾゴイは人目に付かない『夜の鳥』というイメージが強く、その生態はあまりわかっていませんでした。しかし近年、奥多摩での繁殖活動の詳細な記録が報告され、その実態が明らかにされてきました。夜間に活動が活発になると思われていましたが、実際は昼間にさかんに採餌をすること、5日間にわたってビデオカメラを設置した夜間観察によると、まったく採餌活動をしなかったことなど、興味深い話題が満載です。
 夏鳥・ミゾゴイの激減は全国的な問題です。少なくなったとはいえ、「まだ生息している」今の段階での対策が重要です。東京都では現在レッドデータブックの改定作業が行われています。まず、実態を把握してという段階ですので、ミゾゴイに限らず、保護が必要な鳥類についての情報をお寄せ下さい。
(写真は、世田谷区で観察されたミゾゴイ・宮森達雄さん提供)