2009年12月13日日曜日

関東地区鷹の渡り情報交換会に参加して

  

久しぶりに熱気のある集まりに出会いました。『2009 関東地域鷹の渡り情報交換会』〔12月12日(土)午後1時15分~5時30分・池袋・立教大学〕には、茨城や千葉、埼玉、神奈川、そして東京から40名以上が参加。いずれも10年20年にわたって、サシバを中心としたタカの渡りの調査を行っている一騎当千のツワモノぞろいとお見受けしました。より正確な調査を目標に、それぞれ、さまざまな工夫をしての熱き観察報告が続きました。関東各地からの現地報告の後は、信州・白樺峠での調査概要や「タカの渡り全国ネットワーク」の動きなどの紹介もあり、私としては意義深い初体験となりました。
ところで、今回オブザーバーとして参加したのは、以前から東京支部ではこの手の観察が話題にならないのはなぜだろうという疑問からです。ときに群れが見られたという話は聞きますが、単発的で、23区での情報はほとんどありません。今回の集まりでお聞きしたところでは「知る人ぞ知る」ということらしく、相当数が通過していると思われます。とくに、茨城の池野進さんが精力的に調べられた結果によると、千葉の印旛沼あたりから、市川市を通って都内へ入るルート=地図参照は、都心部を通過すると思われます。また、今年10月4日午前中には、多摩地区~神奈川にかけてサシバの数10羽の群れが次々と観察され、時刻を追っていくと飛行ルートが想定されるという、興味深い報告もありました。                         〔川内博〕

2009年12月7日月曜日

珍鳥コヒバリの観察・中央防波堤埋立地にて

  

埋立地や河口など、一見荒れた乾燥地のような場所で見られるコヒバリを、東京港のゴミの最終処分場・中央防波堤埋立地で観察・撮影しましたので報告します〔写真〕。東京でのコヒバリの記録は、1987年11月・江戸川区江戸川河川敷と1998年2‐3月・同じ中央防波堤埋立地に続く3例目と思われます。
観察日は2009年11月29日午前9:50~55の間で7羽の群。雌雄・成幼鳥の区別は不明です。場所は東京都江東区地先、中央防波堤外側埋立地新海面処分場Bブロック。付近は建設残土による埋め立て地区で、沼地に隣接する乾燥した裸地。観察者は三間久豊・小笠剛裕・宮崎雅子です。付近にはヒバリ、タヒバリ、ハクセキレイなどが、また、沼地ではイソシギ、カイツブリ、コガモ、ハシビロガモ、オナガガモ、マガモなどを見かけました。12月6日にも同地の調査に行きましたが観察できませんでした。なお、同地への立入りは許可が必要ですので、誰でも行けるわけではありませんので念のため。                                         (三間久豊)

2009年11月23日月曜日

BINOS(日本野鳥の会神奈川支部研究年報)第16集の発刊

  

日本野鳥の会神奈川支部が年1回発行しているBINOS(バイノス)Vol.16が出されました。今号からA4判と大型化し、115ページ。コンテンツは裏表紙のものを載せましたのでご覧下さい。野鳥の会支部で、毎年きちんと独自の年報を出しているのは神奈川支部だけです。内容は鳥学的な研究から保護のための調査報告まで、野生鳥類に関するあらゆる分野を網羅しています。いずれの論文・報告・記録も充実していて、調査研究のための参考・文献として活用できるとともに、後世への資料として意味のあるものばかりです。
 東京支部でもと期待されていますが、現在の力量では難しいことです。論文・報告の原稿を集めること自体はもちろんのこと、それを出版物として完成させることも同じくらい大変なことです。とともに、もうひとつ難しいことは資金面です。1、2回発行することは、それほど困難ではありませんが、継続的に出版するには相当の覚悟が必要です。実際、バイノスの発行でも頭が痛いようで寄付なども呼びかけています。しかし、この面での一番の助けは、多くの方が報告書を購読することです。それは単に発行費用が回収できることだけでなく、当事者が頑張って継続しようというモチベーションを高めるからです。
 内容・ボリュームから1200円は安いものです。その上、直接関係ありませんが「送料80円」というのはこの種の発行に大変ありがたい助けになっています。詳しくは下記にお問合わせください。神奈川支部のHPへは、本HPのトップページにリンクをはっています。(川内博)
【連絡先】〒221-0052 横浜市神奈川区栄町2-8 横浜藤ビル6F 日本野鳥の会神奈川支部 Tel/Fax.045-453-3301   

2009年11月21日土曜日

東京23区内のセグロセキレイに注目を

  

 板橋区内在住の野鳥写真家、土橋信夫さんからの興味ある情報を紹介します。土橋さんがフィールドとしている都立城北中央公園(板橋区・北区)では、セグロセキレイが昨年から2羽で越冬をするようになったとのこと。以前は多摩川などの中上流部に生息し、23区ではあまり定着していなかった鳥ですが、近年は繁殖期を含めて、分布域を広げていますのでご注目ください。城北中央公園でも以前は秋の渡りの時期しか見られなかったとのことです。今年も10月1日に初認、11月2日にもう1羽加わったとのこと。
 ところで、この話には次があり、写真を撮っていて、1羽の右脚には1本の指を残すだけで、左脚にはまったく指がないのに気づいたとのこと〔写真〕。しかし、なかなかの元気者で、園内の石神井川のカーブにできた砂州を2羽でなわばりとしていて、ハクセキレイが近づくと追い回しているそうです。背中の色などから雄ではないかと思われるとのこと。同じ場所で越冬するということは昨年と同じ個体である可能性があり、不運にも何らかのことで指を失くしたと思われます。
 いずれにしても、指がないというハンディで今後どれだけ生きていけるのか、どんな行動圏なのか、また、興味ある行動が見られるのか、思わぬことで個体識別ができる状態ですので、土橋さんとともに、お近くの方はぜひ観察をお願いします。(川内)

2009年11月18日水曜日

国際シンポジウムへのご案内・東京大学にて

  

東京都産鳥類目録の火山列島などを担当していただいている川上和人さんからの情報です。(独)森林総合研究所主催で『南の島のエイリアン~小笠原・沖縄の外来種管理~』というシンポジウムが12月18・19日に本郷の東京大学で開かれます。鳥類目録作りも、現在島嶼部へ入っていますので、タイムリーな企画として紹介します。ただし、1日目(18日)は通訳なしの英語とのこと。2日目は日本語が主体のようですので、そちらだけの講演名を列記します。興味のある方はぜひ参加され、報告をいただければと思っています。なお、詳しくは下記に問合せてください。
12月19日(土)『南の国のエイリアン』10時30分~16時、東京大学農学部1号館第8講義室 午前(10:30-12:00)島の生態系と生物多様性、社会的動物であるネコの問題、やんばるの森の管理と地域社会 午後(13:30-16:00)小笠原の外来種対策と生態系回復、グリーンアノールの昆虫への影響と管理、山地は侵入生物の最後の砦?、アカギとクマネズミは根絶できるか、ニュージーランドのネズミの管理
「脆弱な海洋島をモデルとした外来種の生物多様性への影響とその緩和に関する研究 小笠原諸島における帰化生物の根絶とそれに伴う生態系の回復過程 沖縄ヤンバルの森林の生物多様性に及ぼす人為の影響の評価とその緩和手法の開発」という案内が、ポスターの最後に記されています。
【問合せ先】alien@ffpri.affrc.go.jp Tel.029-829-8257(川上)

2009年11月11日水曜日

RDB(レッド・データ・ブック)シンポ・成功裏に終わる

  

日本野鳥の会東京支部主催の「第2回東京の鳥シンポジウム」は、11月4日午後6時~9時に、東京・渋谷区立千駄ヶ谷区民会館2階で開催し、パネリスト・報告者を含めて52名が参集し、予定通り終了しました。〔写真〕 タイトルが『東京都のRDB・今われわれにできること』という硬いもので、参加者数が心配でしたが、企画成功の目安としていた50名を越し、関心の高さに一応安堵しました。基調講演では、おもにRDBに関係したことの現状を紹介・解説といったことに力点を置き、東京都が都心部を中心として実施している緑化活動の概要、また、日本野鳥の会が取り組んでいる鳥の保護活動に関しての現況、さらに、東京でのRDBに関係する鳥の実情といった構成でした。現地報告は、実際野外で活動をしている事例で、期待にたがわぬ聞きごたえのある内容でした。パネリスト・報告者の皆様に感謝します。
ところで、このシンポジウムのサブタイトルは「今われわれにできること」で、ここで「私」ではなく「われわれ」としたことに意図があります。具体的に「われわれ」とは日本野鳥の会東京支部および「日本野鳥の会グループ」のことを指し、日本最大の野鳥保護団体としての活動を意味しています。今回の企画は、活動力が低下している野鳥の会に活性をという趣旨も含んでいました。最後のパネルディスカッションでは、参集した皆さんで、「今われわれは何ができるか」を討議したいと思っていましたが、内容がいっぱいで時間切れになり、そこまで進展させることができず残念でした。しかし、参加者の皆さんが、自分なりに何ができるかということを考えるという、この集会の主旨は十分伝えることができたと思います。
東京支部でRDB関係のことを直接的に取り上げたことは初めてですが、今回の成功を機会に、具体的な活動へ発展させたいと思っています。

2009年10月31日土曜日

新刊紹介・調査と保護の実例を著した矢野亮著『カワセミの子育て』

  

先日、練馬区の石神井公園・三宝寺池畔を歩いていたら、平日の午前中にもかかわらず、数十名のカメラマンが出張っていました。そんな中、3羽のカワセミが飛び交っていました。いま、ちょっとした水辺を歩くと、必ずといっていいほどその姿を見かける時代となっています。その先駆のひとつが、東京・港区の自然教育園。この地でのことの始まりは、1988年、園内で伐採した木を燃やすために掘った穴の壁に着目した一組のカワセミ夫婦から。以来21年間、紆余曲折はありながら、今年も無事雛が巣立ったようです。
ここでカワセミの保護と繁殖生態調査に腐心されている矢野亮さんが、『カワセミの子育て』を出版されました。前著『帰ってきたカワセミ』から13年、自然教育園でのカワセミの繁殖は、矢野さんたちの努力や工夫によって継続し、さまざまなデータが集積されました。日本において、これほどつぶさに繁殖の実態が観察・記録された例はありません。また、園としても繁殖環境を整えようという試みが続けられ、さらに、矢野さん自身も、親鳥がいなくなった雛たちを育て、無事に巣立たせるという体験もされています。これらの実績が1冊にまとめられていることはたいへん貴重で、意義のあることです。さらに、写真や図表などを多用してありますので、小中学生にも参考にできる内容となっています。かつて「幻の鳥」だったカワセミを、ふつうに見られる今の時代だからこそ、子供たちにも読んでもらいたい良書です。(川内 博)
〔地人書館・A5判・218ページ、2600円+税〕

2009年10月29日木曜日

シンポジウム「東京都のRDB」に参加し、意思を示そう

  

 「伊豆諸島カンムリウミスズメの調査・2009年度」というタイトルで、三宅島・アカコッコ館に勤める、レンジャーの篠木秀紀さんから『ユリカモメ』11月号に寄稿をいただきました。カンムリウミスズメ(冠海雀)は全長24㎝の小型の海鳥。学名のSynthliboramphus wumizusumeの種小名(後ろの部分・ローマ字読みでうみずすめ)から推測できるように、日本近海および韓国南部のみ見られる準日本固有種で、推定個体数5000~10000羽。東京都のRDB(1998年版)では、伊豆諸島でA(国の絶滅危惧種に相当)・小笠原諸島でB(国の危急種に相当)に指定されています。
 ㈶日本野鳥の会は、「1000羽クラス以上の安定的な繁殖地を複数箇所確保したい」という方針で、調査データの蓄積のある三宅島に重点を置き、本格的な取り組みが始められています。今回のレポートは、噴火後に再開された調査結果の第1報というところで、その中心となっている現地の篠木さんに状況報告をお願いしました。(研究部HP・トップページの研究部レポートのボタンを押すと、その月の全文が掲載されています)
 11月4日(水)に開催します「第2回東京の鳥シンポジウム・東京都のRDB」では、島の鳥については簡単に触れるだけですが、来年予定の第3回では、状況を詳しく扱うことができると思います。
 ところで、今回のシンポジウムでは、サブタイトルを「今われわれのできること」としています。町の中に住んでいて、山奥や洋上のことで私に何ができる?とあきらめている人が多いと思います。しかし、この集りにたくさんの人が参加すれば、それは大きな声となって、原動力となっていきます。ポイントは、一部の人や団体が動き・叫んでも限りがあるということで、多くの人が関心を持ち、行動するということが重要です。関連のある集りに参加するということで、その意思を示すことが「今われわれのできること」の第一歩です。
【カット】カンムリウミスズメの保護を呼びかける冊子

2009年10月17日土曜日

第2回東京の鳥シンポジウムへのご案内

  

                              クマタカ (山口孝氏撮影)
 
昨年に引き続き、第2回の「東京の鳥」シンポジウムを開催します。今回は東京都に関係するレッド・データ・ブック(RDB)の鳥たちを取り上げ、その現状と保護・対策などを考えたいと思っています。

           《どなたでも参加できます》

【タイトル】 第2回東京の鳥シンポジウム
            東京都のRDB・今われわれのできること

【パネリスト】
      青山一彦 ・ 東京都環境局自然環境部計画課係長
      金井 裕 ・ ㈶日本野鳥の会主席研究員
      川内 博 ・ 日本野鳥の会東京支部研究部長

【基調講演】
      1.緑の東京10年プロジェクト ; 青山一彦氏
      2.日本のRDBの現状 ; 金井 裕氏
      3.「レッドリスト・東京」の鳥たち ; 川内 博氏

【現地報告】
      1.森ヶ崎のコアジサシ ; 北村 亘氏
                      (東京大学大学院・農・生物多様性)
      2.西多摩の猛禽類 ; 御手洗 望氏・山口 孝氏
                      (青梅自然誌研究グループ)

【パネルディスカッション】 今われわれは何ができるか

 シンポジウムの全体の流れは、前半部では、それぞれの立場の人から、今何をやっているのか、どのようなことに力をいれているのかという講演を、また、後半部では、野外でレッドリストに挙げられている鳥たちに対して、どのようなことを実践しているかを話していただきます。そのうえで、パネリスト・報告者を交えて、参加者それぞれ、今何ができるかを考えていこうというものです。
 ちょっと硬めの内容になるかもしれませんが、東京湾岸で、西多摩の山中で、それぞれ希少鳥類に対して体をはって頑張っている人の話は聞きごたえのあり、貴重なものとなると思います。今回のシンポジウムは、日頃、野鳥たちのために、地域環境のために、何かをしたいと考えている人には、重要なヒントが得られるものとなるでしょう。
 
【日時】2009年11月4日(水)午後6時開場、6時15分~9時
【会場】渋谷区立千駄ヶ谷区民会館2階
【交通】JR山手線「原宿」、東京メトロ千代田線・副都心線「明治神宮前」・
              同副都心線「北参道」から徒歩10分
【参加費】300円            【主催】日本野鳥の会東京支部                     

2009年10月10日土曜日

「野鳥記録検討会始動」アカアシカツオドリの写真蘇る

  

 日本野鳥の会東京支部では、これまで東京都産の鳥について、客観的に検討する場がありませんでした。今回『東京都産超類目録2000』を作成するにあたって、その必要性が出てきましたので、研究部内に「野鳥記録検討会」を開設しました。座長は叶内拓哉氏。メンバーとしては大塚豊・川内博・鈴木弘行・田島基之・渡部良樹の各氏。その第1回会合が、10月8日(木)に開催されました。当日は強力台風18号が本州を直撃した日。延期が予想されていましたが、メンバーの日頃の行いが良いためか、午後には台風一過の晴れ。鈴木氏が仕事で欠席されましたが、予定されていた「珍鳥一覧」(『ユリカモメ』№648・2009年10月号掲載)の検討から始まりました。その中で記録採否の「基準」案が練られ、次のような案が出てきています。
1.初記録種については、①標本・写真・声紋など後でも確認できる物証のあり、信頼できる人が複数で確認したもの ②標本のあるもの、環境省のバンディング記録 2.初記録ではない場合は、①複数での観察 ②スケッチ・詳しい記録情報などでも可とやや緩和する 3.単独での観察記録は「参考記録」とする・・・
 これらは、あくまで「案」の第一段階で、今後検討を重ねて、決定は『ユリカモメ』誌上に発表します。いずれにしても、単独でそのような機会に遭遇したときは、観察・メモをしっかりして、写真を撮って、できれば仲間に知らせて複数で確認し、早めに発表してください。発表の場合は「印刷物」にすると説得力があります。ブログ・HPなどインターネット上で発表した場合は、年・月・日を明記した完全原稿を50部程度プリントアウトし、しかるべき人(例えば検討会メンバー、支部幹事・リーダーなど)・機関(東京支部研究部、日本野鳥の会、山階鳥類研究所など)に送っておくと記録検討の対象になります。アップしただけでは証拠として採用されませんのでご注意ください。
 写真〔田久保晴孝氏撮影〕は、1978年8月15日に、東京湾富津航路の船上で撮られたアカアシカツオドリです。未発表の記録ですが、証拠として残されていたものがいま蘇ってきました。

2009年9月30日水曜日

繁殖記録・5 東京下町でのセイタカシギの繁殖近況

  

 かつては東京港・江東区地先の中央防波堤埋立地でコロニーを形成していたセイタカシギが、最近、東京・千葉・埼玉などの各地で繁殖が記録されています。今回、東京の下町地域である、旧中川・荒川河川敷・葛西臨海公園での2003~2009年の繁殖状況が報告されました。そのダイジェストをご紹介します。
 この地で観察を続けているのは、越冬鳥調査にも参加されている岩崎正義さん。岩崎さんのレポートによると、旧中川ではその7年間で36羽のヒナが誕生し、19羽が巣立ったとのこと〔写真〕。最盛期の2005年には7組が営巣し、14羽のヒナが誕生し、7羽が巣立ったとのこと。全体の巣立ち成功率も5割を超えていますが、岩崎さんの観察によると、ヘビ・ネコ・カラス・豪雨などに加え、営巣地での人為的な問題から、ヒナの誕生までに困難なことが多数あったとのこと。しかし、矢板にさえぎられて岸に上がれないヒナを近所の人が網ですくって助けたとか、関係する自治体の工事関係部署が繁殖期に工事を止めてくれたことなども記させていて、地元の人たちがみんなで見守ったことが読み取れます。
 岩崎さんによると、7年間連続して繁殖していた旧中川も、今年で営巣は終わりではないかとのこと。なぜか? 詳しい内容は『ユリカモメ』12月号・研究部レポートに掲載される予定ですので、ぜひお読みください。(川内博)

2009年9月21日月曜日

繁殖記録・4 八王子でイソヒヨドリの繁殖確認

  

イソヒヨドリは、日本では磯や港など海岸周辺が主要な生息地域であるが、近年では都市部にも生息するようになったといわれている。八王子・日野カワセミ会の活動フィールドである八王子市、日野市内でも今までイソヒヨドリが何回も目撃されていた。カワセミ会の1983年~2009年6月までの鳥信に47件記録されている。しかし、確実な繁殖記録は2007年まではなかった。
2008年4月にカワセミ会会員A氏が、友人から八王子市内で雌雄を確認という、繁殖の可能性を示唆する情報を得た。2009年5月に再びA氏から、「友人からの情報ですが、八王子市内付近でイソヒヨドリが繁殖し、雛が巣立ったそうです。巣立ちビナを2羽まで確認したが、雌が餌を運び込むので巣内には雛がまだいるようだと話していました。」という情報が寄せられた。
 そこで、粕谷は5月29日に確認に行った。雄親1羽、雌親1羽、巣立ち雛1羽が屋根などにいた。雌親が近くの桜の木から赤くなった実をとって、約30m離れた建物の屋根の軒下で待つ嘴の黄色い巣立ち雛に与えた。桜の実を銜えた雌親の証拠写真は撮れた〔写真〕が、雛にその実を渡すところの写真は撮れなかった。
 6月6日に粕谷は再度観察した。雄親1羽、雌親1羽、巣立ち雛2羽を確認。雌親1羽+巣立ち雛2羽は屋根上の広告板やアンテナに一緒にいて、1羽の雛は雌親に餌をねだる姿勢を示した。雌親は桜の実をとる行動はなく、屋根から少し飛び上がりフライキャッチのような行動を数回繰り返していた。空中の虫を捕っていたのかもしれない。雌親は時々綺麗な声で鳴いていた。一方、雄親は単独行動で別の建物の屋根にいるのが観察された。
 粕谷は6月13日以降、7月までの間、2番子の繁殖を期待して、何回が観察したがこの場所ではイソヒヨドリは確認できなかった。(粕谷和夫

2009年9月18日金曜日

足環付きイカルの身元判明:長野県茅野市→練馬区

  

昨冬は、都内各地でイカルとシメの大群がみられましたが、練馬区の都立光が丘公園で3月19日撮影中に、足環のついたイカルを撮影しました〔写真〕。その写真が山階鳥類研究所に送られ、このたび次のような返事をいただきました。
◎右足/赤、左足/上-赤・下-環境省金属リング、性別:不明、年齢:成鳥、放鳥日:2008年1月14日、放鳥場所:長野県茅野市

この結果、私が第一回収者として登録されるそうです。なお、放鳥者の方がたいへん喜ばれているとのことと、データの整理が終了次第、回収記録の写しと記念シールが送られてくると記されていました。
ハクチョウやガンなど大型種での目視や写真での標識確認はよく聞きますが、小鳥類でもしっかり撮っておけば役に立つことがわかりました。それにしても長野から東京へようこそ。(土橋信夫)

2009年9月2日水曜日

『緊急集会・三番瀬が危ない!』のご案内

  

 東京湾最奥部の千葉県の谷津干潟三番瀬〔写真〕は、日本有数のシギ・チドリの生息地として知られています。最近の谷津干潟には食べ物(ゴカイなど)が少ないらしく、シギ・チドリ類の飛来数が最低レベルとのこと。内陸部化した環境の保全はなかなか難しいことですので、将来が心配です。それだけに三番瀬の現状維持は重要です。しかし、この場所には常に開発の動きつきまとっています。そこで、『緊急集会・三番瀬が危ない!』9月12日(土)午後1時30分~5時の予定で、市川市文化会館3階・第5会議室で開かれるという知らせがありましたのでご案内します。
 チラシの文には、『森田知事の誕生以来、三番瀬の猫実川河口域を人工海浜にする動きが強まっています。県は、6月県議会において、ラムサール条約登録の手続きが進まない理由として、「登録されると、埋め立てや建築等の建設をする場合に環境大臣の許可が必要になる」と答弁しました。また、三番瀬に第二湾岸道路を通すことも表明しました。一方、市川市は、後背地の再開発と一体で、猫実川河口域を人工ビーチにするため、さまざまなことをもくろんでいます。』とあります。
 東京湾岸の水鳥に詳しい、日本野鳥の会東京支部幹事の田久保晴孝さんによると、三番瀬の現状は決して良くなく、ミヤコドリなどを撮ろうとカメラマンが干潟の奥まで追いまわしたり、満潮時に水鳥などが休息している堤防や人工島に、釣り人が立ち入ったりと、頭の痛いことが続いていることです。
 日本野鳥の会東京支部では、これらの干潟とともに、江戸川区葛西の葛西臨海・海浜公園の鳥類園、人工なぎさを対象とした探鳥会を毎月実施しています。また、東京都RDB改訂関係で、東西の人工なぎさの調査が実施されています。“調査は行われたが、鳥はいなくなった”というのでは、研究の意義がありません。ぜひ多くの方が出席して、どこがポイントなのかを把握し、今後の活動に生かしていただければと思います。
 会場の市川市文化会館は、JR総武線・都営地下鉄新宿線「本八幡駅」より南へ徒歩10分、京成線「京成八幡駅」より徒歩15分。試料代500円。三番瀬を守るか連絡会主催、日本湿地ネットワーク(JAWAN)後援。集会問い合わせ先:牛野くみ子・電話 047-453-4987

2009年8月31日月曜日

東京都産の「珍鳥」検討を始めます

  

 ことしの3月に発行した『東京都産鳥類目録2000・自治体編・Ver.1』には、18目65科334種の鳥が収録されています。しかし、その記録の精査はまだ不十分ですので検討を重ねています。また、2001年以後も続々と新しい記録が報告されています。そのなかには全国レベルで記録の少ない「珍鳥」も挙がっています。「珍鳥」の記録は専門的に検討する必要があります。その第1弾として、1975年~2009年6月までに、東京本土部で2例以下の鳥の記録を俎上にあげます。以下の鳥の記録について興味のある方は、研究部までご連絡ください。
【今回検討する珍鳥】オオハム、シロエリオオハム、フルマカモメ、アカオネッタイチョウ、ヒメウ、ヘラサギ、コクガン、サカツラガン、アカツクシガモ、アメリカホシハジロ、シノリガモ、アネハヅル、ヒメクイナ、シロハラクイナ、アメリカウズラシギ、コモンシギ、カラフトアオアシシギ、ハリモモチュウシャク、コシャクシギ、チュウジシギ、トウゾクカモメ、ヒメクビワカモメ、アメリカズグロカモメ、ボナパルトカモメ、ワライカモメ、ハシグロクロハラアジサシ、オニアジサシ、オオアジサシ、キョクアジサシ、エリグロアジサシ、ウミスズメ、ウトウ、サケイ、ヤマショウビン、ヤイロチョウ〔写真〕、ヒメコウテンシ、コヒバリ、ハマヒバリ、マミジロタヒバリ、オオモズ、ウタツグミ、ヒゲガラ、オオセッカ、エゾセンニュウ、チフチャフ、カラフトムシクイ、コノドジロムシクイ、シラガホオジロ、コホオアカ、キマユホオジロ、ツメナガホオジロ、サバンナシトド、ホシムクドリ、コウライウグイス ※写真は1991年6月25日に八王子市美山町で窓ガラスに衝突死亡したヤイロチョウ(曽我千文氏提供)

2009年8月28日金曜日

紹介・鳥類図鑑 『Birds of East Asia』 を手にして

  

日本野鳥の会埼玉県支部の機関誌『しらこばと』9月号を開いたら、『日本鳥類目録』の現状と展望-『Birds of East Asia』刊行を契機として-という、榎本秀和氏の見開き記事が目につきました。内容は日本の鳥類目録の貧弱さを根拠を持って指摘したもので、造詣の深い一文です。『しらこばと』は支部事務所にありますので、興味ある方はぜひ読んでみてください。
ここで紹介するのは、そこで取り上げられていたマーク・ブラジル氏の近著『Birds of East Asia』〔写真〕。さっそくインターネットで注文し取り寄せました。まだパラパラと図版を見ている段階ですが、守備範囲は日本を中心とした中国東部・台湾・朝鮮半島・ロシア東部。分布図がついていますので、我が国では記録されていない近隣の鳥を知るのに最適な本と見受けました。安価なペーパーバック版がアマゾンで3,513円(送料無料)でした。それにしてもちょっと目にした新刊洋書が、注文して2日後には手にできるとは、20年前と比べ隔世の感。 (川内博)

2009年8月12日水曜日

繁殖記録・3 日野市と立川市でのコシアカツバメの営巣状況

  

西日本では一般的なコシアカツバメ Hirundo daurica 〔写真〕は、東京都内での繁殖はあまり知られていません。私は2008年以前から日野市と立川市での営巣を観察していますので、その状況を紹介します。
日野市新井の日野新井アパートは5階建て。13棟中3棟で、その最上階の階段踊り場の壁に巣がつくられ、ペアでの出入りを確認しました。また、立川市富士見6丁目の富士見台住宅では、5階建ての建物の同じような場所に巣がありました。こちらではヒナの声は聞こえませんでした。
東京都内では、1975年~2000年までの期間に、調布市(繁殖確認)、日野市(繁殖確認)、狛江市(繁殖可能性あり)で記録されているようですが、全体的には営巣事例が非常に少ないようですので、今後も注目し ていきたいと思います。都内の他の場所のようすをお知らせください。  (渡部良樹)

2009年8月6日木曜日

外来鳥の現況をお知らせください

  

 都内各地からソウシチョウ〔写真〕やガビチョウカオグロガビチョウ出現の報を聞きます。最近は23区でも目立ちだしました。また、緑の多い公園・庭園や寺社林などではワカケホンセイインコの声が響き渡っています。逆に、「帰化鳥」であるコジュケイの声がすっかりご無沙汰といった状態で、とくに都心部では皆無です。1960~70年代に多摩川河川敷などで話題になったブンチョウベニスズメテンニンチョウなどの現状はどうでしょうか。さらに、70~80年代に目立ったインドハッカハッカチョウホオジロムクドリなどはすっかり影を潜めているようです。
 1961年8月~81年6月までに野外観察された外国産鳥類(外来鳥)のリストが、『ユリカモメ №309』(1981年9月号)に載っています(成末雅恵;首都圏で見られる外国産鳥類について)。そこには79種の名前が登場します。また、今春出版した『東京都産鳥類目録2000・自治体編・Ver.1』では6目15科52種が記載されています。現時点では両者を比較して、変化等を知ることはできません。まず、現状を調べたうえで、傾向などを調べたいと思っています。とくに全国的に増えすぎて、生態系に影響がでる可能性が高い、ソウシチョウやガビチョウ、カオグロガビチョウ、カオジロガビチョウは「特定外来生物」として、その動向が注目されています。そこで、研究部では野外でみられる外来鳥の情報を集めています。ぜひ、ご協力ください。

【報告要領】1.種類 2.観察場所(住所も) 3.生息状況(数も忘れずに) 4.報告者氏名

【報告先】日本野鳥の会東京支部研究部  kenkyubu@mbr.nifty.com
 

2009年7月31日金曜日

ツバメの集団ねぐら

  
ツバメの集団ねぐらがピークを迎えています。
多摩川では、六郷橋下流、新二子橋上流、上河原堰上流、府中四谷橋下流等、昨年と同じ場所でツバメの集団ねぐらが形成されています。

中でも昨年、府中野鳥クラブの外来植物アレチウリの除去の取り組みによりよみがえったヨシ原で、今年も3万羽近いツバメが集団ねぐらを形成しています。
3万羽近いツバメの乱舞は圧巻です。是非一度観察にお出かけ下さい。
最寄り駅は、京王線中河原駅です。徒歩15分ぐらいです。ねぐら入り前の大乱舞が見られるのは、日没時間頃からです。今頃ですと18時30分頃には現場に着いているのが良いでしょう。
集団ねぐらは、8月上旬をピークに急激に減り、9月にはほとんど見られなくなります。

以下は、多摩川の府中四谷橋の下流で7月20日に撮影した集団ねぐらの動画です。



なお、詳細な情報は、多摩川流域ツバメ集団ねぐら調査連絡会のホームページを参照下さい。

2009年7月27日月曜日

繁殖記録2・カワセミの営巣状況を調べます

  

 昨冬はカワセミの生息分布を調べましたが、実際地図上にプロットしてみると、おもな水辺は都内のどこでも生息しているという状況で、地図化することを行いませんでした(『ユリカモメ』2009年8月号参照)。
 しかし、繁殖分布となると、きちんと調べる価値があることです。現在営巣しているところはどこか、そこはどんな環境か、将来的に大丈夫な場所なのかなど、明らかにして、今後の対策を考えることは重要なことです。また、「人工巣」が各地に設置されています〔写真・23区内の公園にて〕。どこにどのようなタイプのものがあるのか、その利用状況はどうかなども、大変興味あることです。
 そこで、予備調査として、繁殖についてご存じの方は、下記にご連絡ください。どこまで明らかにするかなどは、よく連絡を取り合って、連絡(協力)者が納得いく形で調査を進めますので、ぜひお知らせください。(川内博)
【連絡先】E-mail:hkawachi@bg.mbn.or.jp

2009年7月2日木曜日

ツバメのお宿はアパート? 繁殖期の伊豆諸島その4

  

 繁殖期の伊豆諸島の旅も最後は大島。ご協力いただくのは、ずっと以前からお名前だけは存じ上げていた野鳥の会のベテラン・望月英夫さん。いただいた資料によると、在島40年余で確認種は174種を記録とのこと。春・秋の渡りの時期には多数の鳥が見られることや、冬にはハギマシコが100羽単位で飛来し、三原山の山腹で越冬すること、また、昨年はクロツラヘラサギ1羽が海岸に現われたことなど、大島や利島の環境変化などを交えての話を、ご自宅でお聞きしました。庭のまわりは自家菜園の畑とか。キジやウグイスが朝からうるさくて、寝ていられない!と笑いながら、そんな贅沢な悩みも語られました。
 朝からの雨が昼過ぎにはあがったので、岡田港へ送っていただく途中で、二子山(619m)山腹の林道を探索。原生林中心の静かな山道で、オオルリやイイジマムシクイ、ウグイスが囀っていました。また、大島公園の動物園に立ち寄りました。規模は大きくはありませんが、各種の動物が飼育されていて、オジロワシの繁殖に成功し、ペアへの表彰状が飾ってありました。その動物園の入口の管理舎の軒先には、ツバメの巣が5巣あり、2つ以上で子育てをしていました。
 ところでツバメといえば、前日の29日(月)、夕方に大島・元町港に着いて、観光協会で宿を決めて、一歩外へ出たところで、たくさんのツバメの乱舞に出会いました。よく見ると真向かいの3階建てのビル・(株)山田回漕店に、多数の巣があるのが見え、さかんに出入りしていました〔写真〕。実際使っているか否かは調べませんでしたが、1階に10巣以上、2階に5巣以上と、まるでコロニー状態。最近、“益鳥・ツバメ”の神通力がなくなって、平気で巣を落とす人が増えていて、また、新築建造物にはあまり造りたがらず、営巣場所が限られるような傾向があります。もちろん、多数のツバメが営巣しているのは、このお店の人たちが大事にしているのが一番でしょうが、古めの建物が減っていることも一因と思いました。
 今回の一連の旅で気づいたこととのひとつに、島でのツバメの営巣状態。大島・式根島・神津島・三宅島ではツバメの営巣を確認しましたが、八丈島では成鳥の姿すら見かけませんでした。八丈島協力者の岩崎由美さんにお聞きしたところ、ほとんど営巣しないとのこと。しからば父島・母島ではと調べようとすると、メグロや海鳥については詳しい文献も、ツバメについては1,2行と素っ気いない記載ばかりで、実態は読み取れない状態です。今回の鳥類目録では、普通種にも目を向けての作成が必要と感じました。
 大島から東京・竹芝までジェット船では約1時間半。行きの大型船の客の少なさに比べ、帰りに乗った高速船の込み具合を比較し、時代の流れをも感じた旅でした。(川内博)
 
 

2009年7月1日水曜日

ヤマガラ亜種に注目・繁殖期の伊豆諸島その3

  

 伊豆諸島での鳥類目録作成協力者とお会いするとともに、現地の状況を知る旅の第2弾は、6月27日(土)夜10時出港のかめりあ丸(3700t)で、まず神津島へ。船は途中横浜・大島・利島・新島・式根島に立ち寄り、翌28日(日)午前10時に神津島港に着岸。梅雨前線が横たわっている状況なので、小雨が降り続く中での上陸。ここでご協力いただく中村親夫さんとお会いし、ひとまず宿へ。午後から打ち合わせをしている間中に低気圧が通過し、強い雨風。夕方ごろには雨はほとんど上がったものの、目的の天上山(574m)登山は全行程5時間かかるため断念。
 夜半にはアオバズクが鳴き、ホトトギスが大声で鳴きまわっていました。朝4時半~6時半まで村落や林道探索。スズメやツバメ、イソヒヨドリの若鳥などを確認。アマツバメやトビが飛び交い、ハシブトガラスが目につきました。7時~8時半までは中村さんの車で原生林が続く島の北部へ。つづき沢あたりで探鳥。
 この島で気になったのは『ナミエヤマガラ』。ヤマガラの亜種のひとつで、利島・新島・神津島に生息し、従来数が少ないとされていました。今回歩いたところでは、幼鳥を含めてよく見かけた〔写真〕ので中村さんにお聞きしたところ増えているとのこと。しかし、その体色にはバリエーションがあり、オーストンヤマガラのように色が濃いものからヤマガラタイプまで、いろいろいるとのと。ナミエ亜種がどこまで確立されたものか、今後検証してみる必要がありそうです。29日(月)は好天。しかし、10時半の船で式根島へ渡らねばならぬために天上山へは登れず、次回の楽しみに残しました。
 式根島ではご協力者・小倉暁雄さんにわざわざ野伏港まで出向いていただきお会いしました。昆虫が専門とのことでしたが、野鳥に造詣が深く、新島を含めて百数十種を確認され、カラー写真の小図鑑も作成されていました。この島ではヤマガラはほとんど生息せず、シジュウカラが増えているとのこと。小さい島だけに、鳥は種類・数とも少ないとのことですが、神津島では見かけなかったシジュウカラがさっそく出てきました。大島や新島ではほとんど枯れてなくなったマツが元気よく生育し、大浦海岸、泊海岸などの優雅な岩とよくマッチしていました。港近くにたむろするウミネコ数百羽に見送られ、午後2時45分発のジェット船で大島・元町港へ。〈続く〉(川内博)

2009年6月17日水曜日

『府中市域の野鳥たち Ⅱ』が刊行される

  


 東京で自治体単位での鳥類目録刊行が続いていますが、このたび、府中野鳥クラブが『府中市域の野鳥たち Ⅱ』を出版しました。「Ⅱ」となっているのは、2003年10月に、同クラブ創立20周年記念で、同名の本を出しているからです。今回は2002~2007年度の野鳥観察記録をまとめられています。
 目次を見ると「多摩川・定期観察会で観察した野鳥」「多磨霊園・浅間山ラインセンサス」「多摩川におけるカモの調査」「府中市内におけるヒバリの生息調査」などの継続調査結果が出され、また、新たに「ツバメの集団ねぐら」の調査報告が載せられています。
 本書のページをめくりながら、日ごろ気にしていたことが示されているのに気づきました。多磨霊園・浅間山のセンサス結果をもとにした『総個体数と留鳥個体数』のグラフでは、2000年をピークにして、明らかな右肩下がりのカーブが描かれています。ピーク時に比べ31%減とのこと。21世紀に入り、何となく鳥影が少なくなったと感じている人が多いと思いますが、このグラフは如実にその事実を知らせています。同じような右肩下がりのカーブは、1994年~2008年の多摩川のカモのカウントでも示されていて、身近な水辺での現況が読み取れます。「センサス」や「カウント」という科学的な調査方法ですので、その結果が何を意味するのか、今後の解析が待たれるところです。 
 一方、同クラブはツバメの集団ねぐらの調査を踏まえて、他団体と共同で多摩川流域でのねぐら場所の環境保全活動を続けています。そのことは近刊の『バーダー』(2009年7月号)にも紹介されています。市民活動で重要なことは「継続」とよくいわれます。出たばかりですが、今後も意義のある着実な活動が続けられ、数年先には「Ⅲ」が刊行されることを楽しみにしています。 A4判・66ページ、1冊500円・送料80円で購入できます。

【この本の問合せ先】〒183‐0005 府中市若松町3‐23‐3 大室清さん
          ℡・Fax:042‐365‐3297
          E-mail:k.omuro@jcom.home.ne.jp
<振り込み先・ゆうちょ銀行>【記号】10160 【番号】50765011
<他金融機関からの振込先>
【店番】018 【預金項目】普通預金 【口座番号】 5076501


           

2009年6月15日月曜日

繁殖記録1・多摩川下流のチョウゲンボウの母と子

  

 多摩川下流域の橋で今年、チョウゲンボウが繁殖しました。この橋での繁殖は十数年ぶりのことと思われます。巣は鉄骨上のドバトの糞だまりを利用していました。この巣では孵化後2週間あまりたってから雄親が姿を見せなくなり、雌親だけで3羽のヒナへの給餌を頑張っていました。それでもやはり餌の量が足りないのか成育が遅く、一番小さいヒナは孵化から約6週間たっても全身が灰白色のままでした。
 このヒナは結局、橋梁から川の中に落下してしまい、助かりませんでした。そして孵化から6.5週間ほど経過した6月11日(木)ようやく1羽が巣立ちをしました。巣は流れの真ん中に立つ橋脚の近くにあり、陸地に到達するには幅の広い流れを飛び越えなくてはなりませんので、河川敷のグラウンドにヒナの無事な姿を見つけた時は感激しました。
 残りの1羽は6月10日(水)の朝から橋梁上に姿が見えなくなりましたが、これも巣立った可能性はあると思います。6月12日(金)、6月13日(土)には巣から数十メートル離れた橋梁上にヒナ1羽が見られ、雌親が橋の近辺で行動していました。母子家庭のチョウゲンボウが今後も順調に成長してくれることを祈っています。(川沢祥三)

2009年6月13日土曜日

親鳥の迫力にタジタジ・ヤマドリの擬傷に遭遇

  

 6月12日(金)、東京・奥多摩の御岳ビジターセンターを訪れ、最近のようすをお聞きした後、大岳山(1267m)へ登りました。梅雨入り宣言が出ると晴れるのジンクス通りの好天。山頂からは丹沢の山並の先に、白い帽子をかぶった富士山がうっすら見えていました。繁殖の最盛期、キビタキ・オオルリ・コルリ・マミジロ・センダイムシク・ホトトギス・ジュウイチ・ツツドリ・・・と夏鳥のさえずりも一通り聞こえるものの数が少なく、静かな山行で、日本の森の先行きが心配といった状態でした。
 そんな中、馬頭刈尾根から白倉へと下りる路で、初めての体験をしました。午後3時ごろのこと、ひたすら歩いていると、右手の藪からガサゴソという音が聞こえ、トラネコのような茶色い動物が見えました。その動物は目の前に飛び出してきて、左翼を広げ、傷ついたようなしぐさを見せ、笹藪へともぐり込みました。最初は近くに巣があるのかと思いましたが、目の前のササ藪が一直線に揺れ、何かが動くようすが見とれました。「ヒナが逃げているのだ!」ヤマドリの雌の擬傷だったのだと気付きました。姿は見えなくなっても、シューシューという、まるで怪獣が吐くような威嚇の声は続き、その迫力にタジタジ。子を守ろうという親の姿に感動を覚えました。
 同じような体験は、1週間前に東京都心の日比谷公園でも経験しました。こちらはハシブトガラス〔写真〕。園内を巡回するガードマンへの威嚇行動を取材中に、巣立ちビナの近くで写真を撮っていた私への怒りのようすは、今回のヤマドリと同質のもの。ごめんなさいと謝って、そうそうに引き上げました。
 今は野鳥たちの繁殖期、東京都内でのいろいろな鳥の近況をお寄せ下さい。子育ての妨害にならないよう、節度をもって発表します。(川内博)

2009年5月31日日曜日

“移住したくなった”八丈島・繁殖期の伊豆諸島その2

  

 5月26日(火)早朝5時、三宅島・錆ヶ浜港を出て約4時間。東海汽船のさるびあ丸は八丈島・底土港に無事着岸。当日は快晴。宿に荷をおろして、伊豆諸島の最高峰・八丈富士(西山)へふもとから徒歩で。鳥影は少なく、昼過ぎに山頂(854.3m)。派手に出迎えてくれたのは30羽ばかりのハシブトガラスの群れ。中腹に広がる牧場をねじろにしている模様。しかし空にはアマツバメが飛び交い、火口の緑のなかからはイイジマムシクイのさえずりが聞こえ、気分は爽快。その火口へ下りると路は分かれていて、まず浅間神社へ。路の最後には断崖絶壁に囲まれた火口(小穴)があって、いつか見たガラパゴス・サンタクルス島の光景を思い出しました。もう一方の中央火口丘への路は、これもまたガラパゴスの樹海を思わせる着床植物が生い茂る密林。途中からは踏み跡があやしくなりUターン。同じ大陸から離れた火山島なので、伊豆諸島とガラパゴス諸島は似ているのでしょう。
 翌日は、東山の三原山・唐滝川コースへ。バスを降りてから始めたセンサスは、10時過ぎにも関わらず、ウグイス、ホトトギス、モズ、キジバト、アカコッコと次々と現れ、標高300mくらいからはコマドリ、イイジマムシクイ、ミソサザイの共演。美声が谷間いっぱいに響き渡る状態でした。イイジマムシクイをメボソムシクイに置き換えたら、東京都最高峰の雲取山頂付近と同じ。途中硫黄沼を見て、昼前には唐滝へ。その間、鳥の声が絶えず、早朝ならば、三宅島・大路池畔なみの大コーラスが聞けるのではないかと思いました。その足で三原山の山頂へと急ぎましたが、雲行があやしく断念。
 3日目の28日(木)は朝から大雨と強風。今回の第一の目的の八丈島での協力者・岩崎由美さんとの出会いは、そんな中の八丈ビジターセンター。初めてお会いしたにも拘らず、話は鳥だけでなくゴミ問題まで。八丈島の自然に惚れ込んだ岩崎さんにとって、頭の痛いところとのこと。その夜の宿は岩崎さんご推奨のロッジ。気持のいいベット、そしてディナーは味・量とも大満足。食後はオーナーに勧められたマンガ“流されて八丈島”に抱腹絶倒。作者は“たかまつやよい”さん。2年前に一人で移り住んだ女性漫画家で、島の生活ぶりがありのままに描かれているとのこと。読後は私も島へ移住したくなりました。
 29日(金)の朝は薄日がさす中をホタル水路~植物園を回り、アカコッコのさえずる姿を写真におさめ、前日は欠航した東京への船が出るのを幸いに、約11時間の長旅で夜8時過ぎに竹芝へ。悪天候の続く中、何とか目的達成し、繁殖期の伊豆諸島の旅・前半部が終わりました。(川内博)

2009年5月30日土曜日

“イイジマムシクイのさえずりシャワー”三宅島大路池・繁殖期の伊豆諸島その1

  

 いったい何羽いるのだろう?頭上に覆いかぶさった黒い緑の中から、イイジマムシクイのさえずりが降ってくる。個体確認不能。5月24日(日)の早朝6時、三宅島大路池の周りを歩きながら、簡単なセンサスを試みようとしましたが、シャワーのような状態で数がかぞえられない事態でした。2番目に多いのはメジロ、ヒヨドリ、ウグイス、ミソサザイ、コマドリ、アカコッコ、ヤマガラ、シジュウカラ、頻繁にカラスバト、ホトトギス、コジュケイ、コゲラ、ハシブトガラスの声がまじって、湖畔一体大合唱。こんなにすさまじいコーラスを聞いたのは何十年ぶりといった印象でした。
 東京都産鳥類目録作成も第2段階に入り、島嶼部の協力者との顔合わせを始めました。第1弾が三宅島・御蔵島・八丈島ということで、前夜10時20分、東京・竹芝発のさるびあ丸(5000t)で、三宅島に降り立ちました。三宅島の協力者は、長年アカコッコ館に勤めていた日本野鳥の会の山本裕さんですが、ここで会ったのは、現在同館のチーフレンジャー・篠木秀紀さん。2001年以降の鳥類目録を視野に話が弾みました。とくに大路池畔のイイジマムシクイの密度は半端でないこと、そして、イイジマムシクイについてきちんと研究がなされていないことなど、三宅島の鳥の調査・研究での問題点が数多く出てきました。さらに、2000年の噴火以後、現在もガスマスクの携帯が義務付けられている状態での島外からの探鳥会のあり方、島の今後などまで話は発展しました。
“イイジマムシクイのさえずりシャワー”というフレーズは、館前の掲示ポスターに書かれていたもので、まさに的を射た表現だと思います。翌日午後にアカコッコ館横の薄暗い水場で観察をしていると、メジロ・ヤマガラ・カワラヒワ・・・などにまじってイイジマムシクイも何度も水浴びに訪れてきました。この鳥は生息地が世界で伊豆諸島とトカラ列島だけの天然記念物。
 26日(火)早朝5時、錆ヶ浜港に着いたさるびあ丸からは、最新のモスグリーンの大型双眼鏡を首からかけた10人ほどの白人バードウォッチャーが意気揚々と降り立ってきました。世界をまたにかけた一団かと見受けましたが、日本が誇れる探鳥地へようこそという気持ちと、研究が進んでいない残念さが交差する複雑な思いでした。御蔵島へは宿が取れないため断念し、ほとんど人が乗っていない船で、八丈島へと歩を進めました。(川内博)

2009年5月20日水曜日

東京・千代田区のヒメアマツバメ健在・他の場所は?

  

 東京都心にヒメアマツバメのコロニーがあることを知っていますか。漢字で「姫雨燕」と書くこの鳥は、燕といっても、身近にいるツバメとは違うグループで、ツバメがスズメ目の小鳥であるのに対し、アマツバメ目。おなじ仲間には、中国料理で珍重されている『つばめの巣』で知られるショクヨウアナツバメ、また、日本には夏鳥として山地の岩壁に渡来するアマツバメ、ハリオアマツバメなどがいます。
 この鳥は以前は日本産鳥類ではありませんでしたが、1967年に静岡市で繁殖が確認された新参鳥。その後、西日本の太平洋側の各地で生息が見つかり、東京での初確認は1970年三宅島、本土部では72年渋谷のこと。繁殖は76年6月。調布市多摩川原橋のイワツバメのコロニーに中に成鳥で見つかったのがはじめて。その後多摩川流域を中心に、大田区~八王子市まで分布を広げていき、97年からは荒川沿いでも見つかっています。
 そんなヒメアマツバメの最新状況のひとつが、千代田区神田駿河台にそびえる24階建ての『三井住友海上ビル』の最上階外壁にある“穴”でのコロニー。地上からは100メートルの高さ。天然の岩壁のすきまから人工のコンクリート壁の空間に乗り換えての都市鳥化といえます。この話は、『ユリカモメ』№605(2006年3月号)に詳しく載っていますが、その後のフォローをと思っているうちに3年がたってしまいました。
 5月18日早朝、付近を探索する機会があったので観察したところ、30羽以上が乱舞し、“穴”への出入り、そして巣が見え、健在であることを確認しました。
 ヨーロッパの街などでは、教会の尖塔周辺を、ビーンビーンと大きな声で鳴きながら飛びまわるヨーロッパアマツバメの群れが印象的ですが、東京でもそんな光景が見られるようになるかもしれません。
 ところで、都心部での生息は今のところ、ここ1か所しかわかっていません。他の場所での状況をご存じの方はお知らせください。(川内博)

2009年5月11日月曜日

夜の鳥?明らかにされつつあるミゾゴイの生態

  

 ここのところ東京都内で、ミゾゴイ観察の話題が重なっています。世田谷区の蘆花恒春園では、4月10日~4月23日までの10日間滞在しました。園内では日中行動し、背丈の低いササ藪の中を歩きまわり、落ち葉留めのような場所で、ミミズなどを採餌していたとのことです。驚くと木に飛びあがり、動かずじっとしているという行動が見られたようです。止まる木の高さは2.5~3メートル程度で、周辺に高木がある環境ですが、高い木には止まらなかったとのことです。また、新聞報道によると武蔵野・三鷹市の井の頭公園でも4月27・28日に観察されています。そのほか、23区内でも観察記録があるとか。東京都内では、一昨年にも4月に足立区舎人公園に現われて話題になりました。
 ミゾゴイは人目に付かない『夜の鳥』というイメージが強く、その生態はあまりわかっていませんでした。しかし近年、奥多摩での繁殖活動の詳細な記録が報告され、その実態が明らかにされてきました。夜間に活動が活発になると思われていましたが、実際は昼間にさかんに採餌をすること、5日間にわたってビデオカメラを設置した夜間観察によると、まったく採餌活動をしなかったことなど、興味深い話題が満載です。
 夏鳥・ミゾゴイの激減は全国的な問題です。少なくなったとはいえ、「まだ生息している」今の段階での対策が重要です。東京都では現在レッドデータブックの改定作業が行われています。まず、実態を把握してという段階ですので、ミゾゴイに限らず、保護が必要な鳥類についての情報をお寄せ下さい。
(写真は、世田谷区で観察されたミゾゴイ・宮森達雄さん提供)

2009年4月21日火曜日

“裏ヤブ”ってご存知ですか? 薮内正幸の世界展にて

  

 何頭ものゾウが長い鼻を幹にして林立して『ゾウキ林』、『カモのハジ』はカモがだらしなく太るこということで、アヒルが描かれています。もちろんカモノハシをもじったダジャレですが、現在、東京・吉祥寺の武蔵野市立美術館で開催されている「動物画の奇才・薮内正幸の世界展」の一角に、そんなコーナーを見つけました。
 薮内さんの絵は、単行本、図鑑、挿絵、ポスターなどでいつも見ていて、かつてある関係で、当時荻窪にあったご自宅に何度かお邪魔したこともあります。展覧会のメインは、正統派の動物の絵の原画を中心に構成され、見ごたえのあるものばかりです。
 そんな展示の片隅に、関西人・エンターテイメントを発揮した、薮内さんのイラストが5点飾られていました。解説によると、月刊誌『どうぶつと動物園』のカットを編集者に渡す封筒の裏に、毎回同封の絵にちなんだ絵がダジャレとともに描かれていて、それを仲間内で“裏ヤブ”と呼んで楽しんでいたとか。すでにある週刊誌で紹介されたとのことですが、今回初めて見て、思わずニヤリと笑ってしまいました。
 精密に描かれた原画に接する楽しみとともに、『酔ッタカの里』『おやまの・・・オイライオン』などのダジャレとともに描かれている“裏ヤブ”の絵はどんなものか、想像しながらお出かけください。(川内博)
カットは入場券。期間は表記の通り・4月30日休館。美術館は吉祥寺・伊勢丹新館7階。入場料は100円

2009年4月17日金曜日

4月19日・NHK・ダーウィンが来た!でオオタカ登場

  

4月19日(日)のNHK総合テレビ・夜7時30分~8時の「ダーウィンが来た!」で、東京地方のオオタカの生態が登場します。東京都心部でも繁殖する時代になり、身近でオオタカの姿を見る機会が増えましたが、今回の映像は、狩り(ハンティング)を中心に構成されていて、内容についてはディレクターが自信を持っているようです。NHKのホームページを見てもなかなか興味深いシーンが撮れているようです。
東京での猛禽類については、かつてチョウゲンボウ・ツミについては、ある程度まとまったものがありますが、オオタカについては不明のままです。現在、日本野鳥の会東京支部・研究部では、現状を把握するため、情報を集めています。ご協力をお願いいたします。
写真は、昨年、東京23区内の公園で巣立ったオオタカ。

2009年4月16日木曜日

世田谷の鳥-世田谷区鳥類目録-が発行される

  

㈶世田谷トラストまちづくり・野鳥ボランティア(代表 宮森達雄さん)が、3年がかりでまとめ上げた、『世田谷の鳥-世田谷区鳥類目録-』(A4判・212pp.)が発行されました。1910(明治43)年以降、世田谷区内では、2007(平成19)年12月現在までに、在来種18目49科235種、外来種4目8科21種が記録されています。
世田谷区は東京都の23区内西南部に位置する大きな区(23区中2位)で、人口は第1位。平均標高35.6m(最高51m、最低3m)とほぼ平坦な地域で、南端は多摩川が流れています。比較的緑地が多く(緑被率23区中2位・朝日新聞2005年9月16日付)、良好な住環境として知られている場所です。
本文中で出現鳥類をいろいろ分析されています。たとえは環境別構成としては、山野の鳥58.2%・水辺の鳥41.8%、渡り区分としては、留鳥23.1%・夏鳥5.1%・冬鳥38.0%・旅鳥33.8%(不明種を除く)などなど。その中で、私が興味をもったものは「繁殖した鳥とその生息状況」。この目録では、1910~2000年と2001~2007年で比較されていて、以前と比べ、現在はどんな変化が見られるかコメントがつけられています。また、「主な種の消滅と出現」では、戦後の1946(昭和21)年から5年区切りで、ヒクイナ、サンショウクイ、コジュケイ、オオタカ、チョウゲンボウ、ツリスガラなどの記録がまとめられています。集めたデータ数は147,000件。その記録はCD-ROMの形で添付されています。
一般に頒布される予定はないようですので、興味のある方のために、奥付に記されている電話番号とURLを紹介します。℡03-6407-3311、http://setagayatm.or.jp                 (川内博)

2009年4月6日月曜日

「サクラにスズメ」の相関図の謎

  

「梅に鴬」「竹に雀」は昔からの定番ですが、最近は「サクラにスズメ」が一般的になりました。ちょうどサクラの満開のころ。花見をしていると、サクラの花びらではなく、花がクルクルと回転しながら降ってくるのを見かけませんか。そんな時は必ず、スズメの声がしているはずです。よく見ると、スズメがくちばしで花を食いちぎっては、クチュクチュと噛んだあと捨てているのが原因だとすぐわかります。スズメは、花の蜜や子房を餌にしていると考えられています。しかし、同じ蜜を求めてサクラの花に来るメジロやヒヨドリと違い、彼らの行為は「盗食」です。花の蜜は、鳥や昆虫に花粉の媒介を頼むために発達したものです。そのためには、花の正面からくちばしを突っ込んで、くちばしや顔に花粉をくっつけてもらう必要がありますが、スズメのそれは、受粉には無関係のやり方だからです。東京あたりでは、外来種のワカケホンセイが同じ採食法をとります。
ところで、この「スズメの盗食」行為は、昔から見られたものではなく、一般化したのは1980年代です。スズメもサクラも、古くから日本にごく普通に存在している生物ですので、なぜ最近になってこのような行為が一般化したのは謎です。花吹雪ならぬ「花車」という風景も悪くはないのですが、春の風物詩となったこの現象。どなたか謎解きに挑戦してみませんか。

2009年3月27日金曜日

東なぎさ・素敵なロケーション

  


3月19日(木)の午前中、東京都のRDB関係で、葛西臨海公園先の東なぎさの調査を行いました。ここはに入るのに許可が必要なことはもちろん、最大の難関は幅100m程度の運河を渡らなければならないこと。数万円かけて船を雇うこともできず、長年、西なぎさからその一部を見るか、クリスタルビューから遠望するかしかなく、一度も上陸したことがありませんでした。しかし、世界的な珍鳥・クロツラヘラサギが数羽、以前から見られているなど、東京湾最奥部の水辺環境としては重要な場所。しかし、その実態はあまり知られていません。東なぎさ・西なぎさはご存じのように、葛西臨海公園の中のひとつとして造成された「人工なぎさ」。西なぎさが一般開放されているのに対し、東なぎさは生物・とくに鳥類保護のために立ち入りが禁止されている場所で、釣り人などがときどき立ち入いるほかは、人気のない環境として保全されています。
19日は朝、他の調査に便乗して東なぎさに渡してもらい、端から端まで、3時間程度の探索をしてきました。その感想は、“東京湾最奥部にこんな素敵な環境が形成されているとは!”という、予想以上の驚きでした。上陸したときは小潮の干潮時、オオジュリンやツグミなどが飛ぶ、枯れたヨシ原を探索しながら東端に着くころには砂質の干潟があらわれてきて、ダイサギやアオサギ、ユリカモメ、ハマシギの群れが次々に飛来し、ミヤコドリも10羽以上が採餌するような状況になりました。なにより気分がいいのは広々とした干潟が形成されていること。人工なぎさの成功例ではないでしょうか。周りの景色も東京とは思えない、しかし、水族園の建物やディズニーランドが近くに見えたり、佃島の超高層ビルが遠望できたりするので、確かに東京は間違いないと確認するという、素敵なロケーションでした。
カンムリカイツブリ・スズガモの数1000羽の群れ、夏羽のハジロカイツブリの小群、シロカモメ、ミサゴなど26種類を数えました。鳥影はまだ少ないという印象でしたが、逆に、もっといい環境にして、とくにシギ・チドリ類が利用できるような工夫のしがいがある場所だとも思いました。
詳しくは4月15日(水)夜に予定している『日本野鳥の会東京支部・室内例会』で写真を交えて報告します。
近く研究部HPに案内を載せますので、ご来場ください。(川内博)

2009年3月22日日曜日

冬鳥の終認(しゅうにん)記録をとろう

  

ここのところ荒川の彩湖に何度か訪れています。ヨシガモが近くに見られます(写真)。天気の良い日などには、独特のディスプレイなども観察でき、ヨシガモ・ウオッチのポイントのひとつ。また、この湖のセールスポイントであるカンムリカイツブリはほとんどが夏羽に換わっていて、以前の「白い鳥」から黒っぽい鳥に変身しています。また、オオバンが200羽程度越冬していて、群れで岸辺に上がって、ゆっくり採食している姿も見ものです。
これらの冬鳥たちは、間もなくこの地を去って行くでしょう。いつ姿を消したか、それを「終認」といい、その正確な日を知ることはけっこう難しいものです。なぜなら、いつも観察しておかなければならないからです。
今年の冬は、オオハクチョウが飛来したり、ヒクイナが越冬したり、オオコノハズクが長期滞在したりと、ギャラリーが押し寄せるような話題が続きました。3月下旬から4月いっぱいは、冬鳥と夏鳥の交替時期、鳥たちの動きにご注意を。(川内博)

2009年3月16日月曜日

今年のツバメの初認日(しょにんび)はいつ?

  

この時期の風物詩のひとつは、夏鳥・ツバメの初認日(その年初めて観察した日)。例年トップグループの多摩川では、今年は二子橋下流で3月9日とのこと。例年より早いようです。私も13日、練馬区の都立石神井公園のボート池(1月にオオハクチョウ4羽が飛来した池)で、上空を飛ぶ1羽を観察しました。ただし、月に数回しか行かない場所なので『初認』かどうかはわかりません。地元の真下弘さんにお聞きしたところ、今年はまだ見ていないが、例年は3月上中旬に少数の通過個体があり、繁殖個体は3月末ごろ渡来とのこと。定着はしない個体だったのかもしれません。
ところで、中央区銀座では、繁殖個体の飛来が早まっているのというレポートがあります。銀座をフィールドにしている金子凱彦さんが、1984年~2008年までの間で、継続調査している松屋本店裏、東都自動車、マリンスポーツ財団などでの飛来時期が、当初は4月上旬だったのが、最近は3月下旬、中旬にと早まっているとのこと。身近な場所ではいかがですか。ちなみに、金子さんのレポート報告の題名は「銀座地区のツバメの観察記録(3)(1984年~2008年)」、都市鳥研究会の最新刊『Urban Birds』Vol.25 に所収されています。(川内博)

2009年2月28日土曜日

冬場に夏鳥ヒクイナが生息・東久留米市黒目川で

  

1月末に新聞などで報道されていますのでご存じの方が多いでしょうが、関東地方では夏鳥のヒクイナが、真冬に東京都内の川で観察されるという珍事。場所は東久留米市幸町1丁目の黒目川。発見されたのは1月24日ごろ。それ以来ほぼ同じ場所で生息。私が観察したのは2月22日(日)。黒目川は街中を流れる石造りの護岸の川幅10数mの小河川。両側は人や自転車が走る遊歩道となっています。最近の珍鳥出現場所の定石通り、数十人のカメラマンとギャラリーが集まっていました。私もその中のひとりとなり、観察と撮影をしてきました。この地のヒクイナは人を恐れるようなそぶりは全くせず、岸辺の草むらを歩きながら、一所懸命餌探し。草むらが途絶えるとその場所は急ぎ足で通りぬけ、また、草むらに入ると、短い尾をピクピクと立てながら、歩きまわるという行動でした。ヒクイナの冬季の観察例は、たぶん、東京都内では初めてだと思われます。繁殖自体も激減していて、確実な繁殖事例は、1990年6月の狛江市多摩川までさかのぼらなくてはならないのではないでしょうか。(川内博)

2009年2月13日金曜日

水元公園の妙なカモ・続報

  

東京・葛飾の都立水元公園で、目の周りが白い雌のヒドリガモの話題をアップしましたが、興味ある情報が寄せられましたの紹介します。一つは、同じような個体が、同じ水元公園で、2008年1月26日に観察・撮影されていたという、落合はるなさんからの情報(写真)。もう一つは、このようなタイプ(アイリング型と命名)以外にも、眼鏡型や後頭白髪型・・・がいるという話。ハンドルネーム(Shin's)の匿名情報ですが、おもしろい内容ですので、ご本人の了解を得てURLを下記に表示します。ぜひアクセスして、新たな情報をお寄せ下さい。「をかしの庭」http://walkandsee.blog80.fc2.com/blog-entry-245.html

2009年2月6日金曜日

講演会案内 自然誌学と自然誌文献-鳥類を例にして- 講師:大野正男・東洋大学名誉教授

  

自然誌学の泰斗、東洋大学名誉教授の大野正男氏の講演会が、2月18日(水)午後6時から、JR原宿駅近くの渋谷区立千駄ヶ谷区民会館2階ホールで開かれます。「自然誌学と自然誌文献―鳥類を例にして-」と、少しかたいタイトルですが、最近インターネットの普及で、やや軽視されがちな「書籍」の重みを熱っぽく語っていただけると思います。過日、先生のお宅を訪ねた際、動植物・自然・環境関係の書籍が、びっしりと並べられている書棚(写真参照)を拝見しながら、「蔵書は何万冊ですか?」と尋ねたところ、「冊数ではもう数えていない、横に並べて1800mある」とのお答えでした。自宅はもとより、庭に建てられた3棟の書庫に、きちんと整理されている様は壮観でした。新刊・古書の新規購入・寄贈はもとより、日本中の自然関係の団体に所属され、毎日届けられる書籍は膨大なもの。先生のすごいところは、分量もさることながら、それらの内容を個々にチェックして、所定の場所で管理されていること。今回、武蔵野に繁殖分布を広げているエナガについて『コケ類』との関係で調べているといったところ、たちどころにいくつもの文献を紹介されました。先生のもともとの専門は昆虫学。鳥はたくさんの自然関係分野のひとつなのに、『脳ピュータ-』の中の高性能回路には驚愕の一語。ちなみに、私の鳥・自然関係の書棚・ファイルを測ったところせいぜい150m。これだけでも整理・整頓に苦慮している毎日なのにと、その能力の違いに愕然とする思いでした。大野先生の鳥関係の講演はいままであまりありませんでしたので、今回は絶好の機会です。ぜひご参集ください。
【日時】2009年2月18日(水)開場午後6時・開演6時30分・終了9時予定 【会場】渋谷区立千駄ヶ谷区民会館2階 【交通】JR原宿駅・東京メトロ千代田線明治神宮前・副都心線北参道下車、徒歩約10分 【参加費】300円 【主催】日本野鳥の会東京支部〔会員でなくても参加自由です〕 (川内博)

2009年2月4日水曜日

清瀬市・柳瀬川で越冬ツバメ発見・情報をお寄せ下さい

  

「越冬ツバメ」の話題は昔からありました。とくに浜名湖畔の『お宿』は有名で、半世紀以上の歴史があり、1970年初めには140羽が定宿にして越冬していました。しかし、年を追うごとに減っていき、1984(昭和59)年2月7日に最後の1羽が飛び立ったきり帰ってこず、消滅したという記録があります。これほどの越冬ではなく、数羽の記録は東京でも多摩川をはじめ、いくつも観察されています。1975年発行の『東京都産鳥類目録』には、1961年1月1日6羽+、調布市多摩川(無事越冬)、翌冬も同地で2羽が越冬したようです。64年には浅川という記録もあります。その後も、1976(昭和51)年1月4日に西多摩郡(現あきる野市)五日市町、同じ冬には川崎市多摩区多摩川で数羽の越冬が記録され、新聞記事にもなっています。94年12月、96年1月にも多摩川で記録されています。さらに調べると、まだ記録があると思います。
ところで、今年は1月26日に、清瀬市柳瀬川1羽が観察され、撮影されました。発見した青木秀武さんによると、場所は城前橋上流100メートル付近で、川面や畑の上を飛び回り、陽のよくあたる護岸コンクリートの上や、ビニールトンネルの止まるなどの行動を繰り返したとのことです。このことをMLに流したところ、さっそく千葉県の小櫃川河口で、1月3日に1羽観察したという情報が、西方明雄さんから寄せられました。腹部が茶色っぽい個体だったとのこと。
これを機会に、首都圏の最近の「越冬ツバメ」状況をまとめてみようと思っています。ぜひ状況をお寄せ下さい。自分の観察だけでなく、確実と思われるご存じの記録を教えてください。また、文献などもご教示いただければ幸いです。
【情報提供先】研究部HPからお願いします。 http://homepage2.nifty.com/tokyo-birdstudy/
写真:水村豊次郎氏提供

2009年1月28日水曜日

伊豆諸島・小笠原諸島の鳥にご注目を

  

東京都は、香川県・大阪府に次いで、日本で3番目に狭い面積の自治体ですが、太平洋上に続く、伊豆諸島や小笠原諸島、硫黄列島などが含まれているため、その守備範囲は日本一です。現在作成進行中の『東京都産鳥類目録』は、日本最東端の南鳥島(東京から約1800km)や最南端の沖ノ鳥島(同じく1700km)までフォローしようと考えています。今年から、島ごとの鳥類目録の作成に入ります。まず、大島・利島、三宅島、八丈島、鳥島、小笠原各島、南硫黄島あたりから作業が始まる予定です。しかし、青ヶ島は島在住や研究者が見つかっていません。どなたか詳しい方をご存じないですか。ところで、2月1日(日)のNHK総合テレビの「ダーウィンが来た!」(夜7時30分~8時)は、最新の南硫黄島のようす『南硫黄島・ただいま進化中』が放映されるとか。
写真は小笠原・母島でパパイアを食べるメグロ(四半世紀前の撮影・川内)

2009年1月19日月曜日

カワセミ調査ありがとうございました

  

この冬に初めて実施しました東京都内のカワセミ調査は、1月11日(日)好天に恵まれて、無事終了しました。現在、記録が続々と寄せられています。渋谷区の明治神宮からは3羽(2♂・1♀)、文京区の六義園では1羽(♂)、練馬区の石神井公園からは、この冬は4羽越冬しているが当日は1羽(♂)確認とか。清瀬市の柳瀬川流域の金山調節池では3羽(2♂・1♀)、東久留米市の黒目川・落合川ではそれぞれ1羽ずつ。新顔としては、下町足立区の桑袋ビオトープ公園で1羽確認・・・・。この場所は有名だから、誰かがすでにと思わず、ぜひご報告ください。締切は1月31日です。

2009年1月9日金曜日

ハクチョウの飛来にご注意ください・餌やりや悪影響のある撮影の自粛呼びかけをお願いします

  


1月8日(木)夕方、オオハクチョウが石神井公園(練馬区)に4羽(成鳥2羽・幼鳥2羽)飛来し、本日9日(金)に確認・撮影され、テレビのニュースなどでも報道されました。9日は氷雨でボートは休業だったので一日中いたようですが、明日にも飛び立つかもしれません。また、2006年1月の善福寺池(杉並区)のように、しばらく定着する可能性もあります。飛び立った場合はどこに行くのかぜひご注意ください。また、定着した場合は、善福寺池での例のようにギャラリーが勝手にパンなどを多量に与えたり、マスコミが無理な撮影を試みたりする可能性があります。今冬は「鳥インフルエンザ」の関係から、従来給餌がさかんだった日本各地で、中止・自粛が広がっています。その影響は必ず出ると思いますので、東京へのハクチョウ飛来地が増えると考えられます。すでにこの冬、2008年12月16日に多摩川(世田谷区玉堤)で成鳥1羽・幼鳥1羽が観察されています(廣田行雄氏観察)。もし、身近なフィールドにハクチョウが飛来した場合、しっかり観察するとともに、ギャラリーや関係機関に呼びかけて、過度な餌やりや悪影響のあるような撮影になど対処してもらうような働きかけをお願いします。最近は、公園などでの野生動物やドバトへの餌やりの禁止が広まっていますので、個人で対応する場合はその流れをうまく利用して説得するのも一つの手と思います。(写真は石神井池のオオハクチョウ:西村眞一氏撮影)

2009年1月1日木曜日

越冬鳥調査について

  

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
1月は恒例の「越冬鳥調査」を行います。この調査は、冬季に生息する鳥(留鳥や冬鳥)の種類と個体数を記録するもので、従来から「カモ類のカウント調査」として、30年以上の実績をもったものです。今年と来年は、2000年代の状況を明らかにするため、全種・全地域(東京本土部)を対象に実施しますので、ご参加ください。
;2009年1月3日(土)~1月18日(日)・昼間の観察
2.調査地域;東京都全域(伊豆諸島・小笠原諸島およびその海域も含む)
3.対象種・数;全種。とくにカモ科鳥類(ハクチョウ・ガン・カモ類)および、水鳥10種(カイツブリ・カワウ・ゴイサギ・ダイサギ・コサギ・アオサギ・バン・オオバン・ユリカモメ・カワセミ)については、カウントを実施。その他の鳥については観察した数。
4.記録報告;パソコン利用者は、インターネットで「日本野鳥の会東京支部研究部」に入り、「『鳥信』コーナー情報募集中」から「ホームグラウンド以外の場所」を開き、調査開始地点を地図上に記して、観察記録をご入力・送信してください。ファクシミリ・郵送の場合は、任意の用紙に記入し下記にお送りください。その際、氏名・連絡先をお忘れなく。
〒160-0022 東京都新宿区新宿5‐18‐16 新宿伊藤ビル3階 日本野鳥の会東京支部研究部
5.結果発表;本HPおよび機関誌『ユリカモメ』

※カワセミについては、1月11日(日)に都内一斉調査『東京都内にカワセミは何羽いるの?』を実施します。詳しくは、本HPの「研究部レポート」・「研究部ブログ・12月22日付」をご覧ください。